ひとつ前のエントリで写真だけ掲げたが、昨日は、バス・ツアーで、フィラデルフィアとランカスターへ行った。いずれも、ペンシルヴェニア州に所在する。ペンシルヴェニアとは「ペンの森」を意味し(Sylvaniaはラテン語で「森の土地」)、信仰の自由を求めてこの地に移住したウィリアム・ペン*1によって築かれた。早朝、ニューヨークを発ち、2時間強ほどで、フィラデルフィア着。まずは、ベンジャミン・フランクリン(1706~1790年)の墓地を外から見学(残念ながら改修中で、中には入れず)。フランクリンは、建国の父の一人で、実業家、政治家、研究者。ボストン出身だが、フィラデルフィアで印刷業者として、そのキャリアを開始した。
続いて、自由の鐘(Liberty Bell)が展示されたミュージアムへ。この鐘は、もともとは州議会(現在の独立記念館)の議事堂で使用されていた(1753年~)。聖書の一節が刻まれており、その中にある「自由(Liberty)」の文字から、19世紀半ばに自由の鐘と呼ばれることとなった。写真にもあるクラックは、当初からのものという。
19世紀半ばに奴隷解放運動の象徴とされたことから、マーチン・ルーサー・キングやダライ・ラマ、ネルソン・マンデラも当地を訪れた。公式の説明では、この鐘が「1776年7月4日のアメリカ独立宣言の際に鳴らしたと言い伝えられる有名な話は、証拠がない」とのことだが、独立宣言に対するアメリカ人の思いの深さを感じさせる逸話である。
自由の鐘が飾られたミュージアムのすぐ近くには、現在、独立記念館(Independence Hall)等として使用されている建物群がある。
記念館内部には、独立宣言(1776年)や憲法(1787年)が飾られている。飾られているものは、それぞれ当時印刷されたのだとか。
以下の写真は18世紀末に連邦の議事堂として使用された建物(1790年から10年間、米国の首都はフィラデルフィアに置かれた)。もともとは、裁判所として使用されていた。1階がHouse、2階がSenateの議場として用いられた(「上院」、「下院」の語源)。当時の上院の定員は32人(16州から2名ずつ選出)。
下院で説明を受ける。
上院に置かれたペンとインク壺は当時のものだそう。上院と同じフロアにある小部屋には、ルイ16世とマリー・アントワネットの肖像画が飾られている。フランスは米国独立を支援したが、そのことが当時どれほど重く受け止められていたか分かる。
第1回大陸会議(1774年)が開かれた、カーペンターズ・ホール。ここから独立への動きが加速することになる。
ベンジャミン・フランクリンが局長を務めた郵便局(現在でも郵便局として用いられている)。その裏に、ベンジャミン・フランクリン・ミュージアム。
ワシントンとフランクリンが通った教会。70番の座席は、ワシントンの定位置だったそうだ。
英国からの移民が建てた家が残っている地区。米国最古の住宅街。ロンドンの街角のよう。
最初の星条旗を作ったベッツィ・ロスの生家。現在はミュージアム。噴水と猫は、後に作られたもの。
ふたたびバスに乗り込み、ランカスターへ。1時間30分ほどで、アーミッシュ*2の生活する街に到着。アーミッシュの家の見分け方は、電線が引き込まれていないこと、家の前に自動車が止められていないこと、しばしば洗濯物が干されていること、だそうだ*3。
バスを降りて、アーミッシュのおじさんが運転する馬車へ。アーミッシュの農園等*4を見物。
アーミッシュの子供たち。
馬車が止まると、クッキーや飲み物を売りに来た。レモネードを購入。2ドル。テーブルの上にある装飾を施された馬蹄は5ドル。
道路沿いを歩くアーミッシュのおばあさん。
アーミッシュもチップ歓迎。
馬車を降りて、おじさんとお別れ。
「アーミッシュは人里離れた土地で自分たちだけのコミュニティを形成している」と勝手に想像していたが、よくあるアメリカの田舎にアーミッシュでない人びとと共に暮らしていることに驚いた。
一夜明けて、本日30日は、ブルックリン植物園へ。八重桜が満開と聞いて行ったのだが、たしかに満開で綺麗だったのだが、なにかコスプレをして集まる日になっているようで、日本文化がどこかが突出した形で受け入れられていると知る。また、桜の下でシートを敷いて飲み食いするのが日本だけの習慣でない*5ことも知った。
*1:1644~1718年。英国生まれのクエーカー教徒。
*2:宗教改革急進派に分類されるスイス兄弟団(1525年結成)に端を発する、幼児洗礼を否定するキリスト教の一派。アーミッシュのもととなるグループは、スイスの牧師(メノナイト)であったヤコブ・アマンに従うものとして、1636年に形成された。信教の自由を保障していたペンシルヴェニア――その成り立ちは前述――に、18~19世紀にかけて移住しコミュニティを形成した。復古主義的な宗教観を有し、服装、乗り物、生活様式の全般にわたり、近代的なものを拒否する。森孝一『宗教から読む「アメリカ」』(1996年)参照。
*3:アーミッシュは電気も自動車も使用しない。また、米国では一般に乾燥機を使用するが、アーミッシュは電気を使用しないため乾燥機も持たず、洗濯物を外に干す。
*4:森孝一・前掲書によれば、アーミッシュは機械や農薬を用いないが、単位面積あたりの千生産高は「全米でも有数」。
*5:ただし、米国では屋外での飲酒を禁ずる地域も多い。園内だから許容されているのであろうか。